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PCテクノロジートレンド 2021 – プロセス編 (1)

新年の幕開けに、パーソナルコンピュータのハードウェア技術の動向を占う「PCテクノロジートレンド」をお届けする。まずは業界のあらゆる活動に大きな影響を及ぼす半導体プロセスの動向について紹介したい。

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皆様、あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。

2020年はコロナのお陰で散々な年だったわけですが、現時点でもまだ収束からはかなり遠い所にいるのは事実で、その意味では引き続き自衛の努力が必要なのは致し方ない所。PC業界も、特に我々プレス関係にとってはイベントが全滅、というなかなかシビアな状況で、それもあって情報の入手が大分困難になったのは間違いない(イベントで海外のメーカーの馴染みの担当者からこっそり…という機会が壊滅したのはかなり厳しい)。まぁその分オンラインである程度カバーは出来たのだが、特にProcessに関しては、それを使っているメーカーの声が聴けなくなってしまった(あとArm TechConがDevSummitに切り替わり、EDAベンダーの講演が殆ど無くなってしまった)ので、かなり厳しい部分はあるのだが、一応判る範囲でご紹介してゆきたいと思う。

TSMC

2020年はとにかくTSMCの株が爆上がりした1年、とすればいいのだろうか。2019年に量産に入った7nmプロセスはスマホ向けSoCベンダーやAMDだけでなく、サーバーとか一部組み込み向け、それとAIプロセッサ向けに非常に幅広く利用される様になっており、加えてまずAppleのA12XやM1向けに5nmプロセスの量産も開始、既に搭載製品が出荷されているのは御存じの通り。結果として既にArF+マルチパターニングのN7というのはMature Processと化しており、この若干の改良型であるN7P(N7とデザインの互換性あり)も広く使われている。既に低価格向け(ArF+液浸)に関して言えば、このN7PがメインでN7はもう新規受注は行っていない模様だ。

一方でN7のトランジスタ層を一部EUV露光に切り替えたN7+、及びN7/N7Pと互換性を持ちながらEUVを利用したN6も用意されているが、N7+は既にいくつかのSoCで採用されている。一方でN6に関してはDesing RuleがN7/N7Pと互換で、ロジック密度を18%向上できるとしているが、Design Ruleが互換だからといってN7で製造していたものをそのまま補正なしでN6にもっていける訳ではないあたりが難しくて、それもあってかN6の採用例は今のところ聞いていない。もっとも現状N5が立ち上がっている現状では、N6の魅力はあまり無いというのが正直なところだろう。

さてそのN5、TSMCによればN7比で

  • エリアサイズを45%削減
  • 同一周波数なら消費電力20%削減
  • 同一消費電力なら動作周波数15%向上

としている。N7+がN7と比較して

  • エリアサイズを17%削減
  • 同一周波数なら消費電力10%削減
  • 同一消費電力なら動作周波数が向上(数字は示さず)

という事だったので、N5をN7+と比較すると

  • エリアサイズを24%削減
  • 同一周波数なら消費電力10%削減
  • 同一消費電力なら動作周波数が向上(10%程度?)

という計算になる。既にApple M1の高い性能と低い消費電力はレポートも色々出ているのでご存じの方も多いだろう。あれの全部がTSMCの5nmのお陰というつもりはないが、一助になっている事は間違いない。このTSMCのN5が、2021年度にはPCマーケットに本格的に投入されることになる。言うまでもなくAMDのZen 4世代コアとNavi 3、それと恐らくはCDNA 2でも採用されることになるだろう。加えて言えば、AMDだけでなくIntelとNVIDIAもこの5nmプロセスを少なからず利用することになると思われる(この辺はまた後で)。

話を戻すと、TSMCはこれに続いてN5Pプロセスを既に発表済である。こちらはN5からのエリアサイズ削減の効果は無い(少なくとも公式には表明されていない)ものの、N7と比較して

  • 同一周波数なら消費電力40%削減
  • 同一消費電力なら動作周波数20%向上

とされている。またN5プロセスからの変更は少ないそうで、比較的容易にN5→N5Pに移行できるとしている。

気になるのは、N7+以降のプロセスは全部EUVを利用することになる訳で、そんなにEUV Stepperあったっけ? という話なのだが、こちらにもある様にASMLは2020年の第3四半期だけで10台のEUV Stepperを出荷しており、恐らく2020年通年では20台を超えるEUV Stepperを出荷している。現時点で顧客はTSMCと次に説明するSamsungの2社で、この2社がしかしEUV Stepperの取り合いをしているという現状である。ただASMLは2019年までに60台以上のEUV Stepperを出荷しており、初期の光源出力の弱い機種は様々な研究機関など広範に収められたが、光源出力を高めると共にスループット改善を図ったNXE:3400Bはほぼ全量がTSMCとSamsungに行ったとみられる。結果、TSMCは少なくとも30台、Samsungも少なくとも10台のEUV Stepperを保有しているはずで、2021年は更にこの台数が増えると思われる。そんな訳で、少なくともTSMCとSamsungの2社に関して言えば、5nmプロセスの製造には支障はないだろう(勿論Intelの脱落により、特にTSMCの先端プロセスは逼迫しまくっているのは変わらないが)。

その先の話をすると、TSMCは11月に3nmプロセス対応のFabの建屋が完成した事が伝えられており、2022年には量産に入る見込みとされる。まぁこの2022年の最初の顧客は、例によってAppleではないかと思われるので、PCマーケットがこの恩恵に与れるのは2023年に入ってからだと思われるが。とりあえず2021年がN7+とN5、2022年がN5Pというあたりが無難な予定だろう。

ちなみにTSMCは3nmでは通常のFinFETを利用する予定で、GAA(Gate All Around)は2nm以降となっており、これに関して言えばSamsungの後塵を拝する格好になるのだが、問題はSamsungのGAAが本当にTSMCと同一タイミングで提供できるかどうかという話と、GAAの効果がどこまであるか(既にトランジスタより配線層がネックになっている)というあたりであるが、この辺の見極めは現時点では不可能である。

  • PCテクノロジートレンド 2021 - プロセス編

    Photo01: 過去には最大13匹まで行った大原家の猫も、今ではチャシー(左)とまめっち(右)の2匹だけに。
    (編集注:「PCテクノロジートレンド」では例年、記事中に度々”猫”が登場することがあります。これは、著者の助手(?)をつとめる猫たちが仕事を手伝う(?)様子を節目として差し込むことで、複雑な話題を読み解きやすくする効果を狙った演出かもしれません)

Samsung

色々入れ変わった昨年のRoadmapから一転して、今年は基本的な路線は昨年と変わらない様だ。強いて言えば4LPEを本当にやるかどうか怪しいという話が出てきており、これをパスして3GAAに直接飛ぶ、という可能性もある。一応現状で言えば2019年に7LPPと6LPPを立ち上げ、2020年前半に5LPEの立ち上げに成功。この5LPEを利用してQualcommがSnapdragon 888を製造したことで、一応量産クオリティに達している事は確認できた格好だ(TSMCのN5と比較してどうこう、という話を議論するにはまだ時期尚早だが)。もっともPC向けに関して言えば、NVIDIAがGeForce RTX 3000シリーズをEUVベースの7LPPとか6LPPではなく、ArF+液浸の8LPPをベースにした8N(NVIDIAスペシャル版)を採用した事もあり、2021年までお預けとなっている。

実は(というほど隠れた話でもなく結構有名な話であるが)Samsungの武器は価格である。tom’s Hardwareが2020年9月にTSMCのウェハ製造コストの推定値を公開したが、これによれば












Node Wafer Cost
90nm 1,650$
65nm 1,937$
40nm 2,274$
28nm 2,891$
20nm 3,677$
16/12nm 3,984$
10nm 5,992$
7nm 9,346$
5nm 16,988$

となっている。16nm世代だと1枚4,000ドルなのが7nm世代ではほぼ1万ドル、そして5nm世代では1万7,000ドルまで高騰している形だ。で、Samsungはこの先端プロセスに関してかなり思い切った値下げ(半額とは言わないまでも4割くらい下げたらしい)を提示した結果がQualcommの獲得につながった、としている。それでも7nm世代のような先端プロセスでGeForce RTX 3000シリーズを獲得できなかったのは、供給能力の問題か、Yieldの問題か、あるいは両方というあたりだろう。GA102(GeForce RTX 3080/RTX 3090)は283億トランジスタで628平方mmというかなりデカいダイである。勿論これは8Nプロセスだからで、7LPPにすれば多少は縮まるだろうが、TSMCのN7を使うGA100(NVIDIA A100)が542億トランジスタで826平方mmだから、N7と7LPPのトランジスタ密度が大きく変わらないとすれば、GA102を7LPPに持っていっても430平方mmほどのサイズになると推定される。生産量が限られているならばこれは全く問題ない数字だろうが、Appleほどではないにしても数十万枚のビデオカードを売りさばくとなるとそれなりのウェハ生産量が必要であり、しかもYieldが低かったりするとその分を更に上乗せする必要がある。このあたりがNVIDIAが7LPPではなく8Nを選んだ理由と考えられる。

さてその2021年であるが、TSMCにはやや水をあけられているとはいえ、SamsungもEUV Stepperの充実に努めており、5nm世代でTSMCをキャッチアップ、3nm世代で先行したいという努力を続けている。厳密に言えばTSMCのN5Pに相当するのがSamsungの4LPEであり、今年初めのニュースでは2021年中にこの4LPEと3GAAの両方の立ち上げを行う予定だった。ところが2020年7月にDigiTimesが、この4LPEをスキップするのではないかというニュースを報じている。実際問題、5LPEはキャッチアップといってもややビハインドがあり、しかも生産量という意味では大きく水をあけられたままであり、それは2021年でも大きくは変わらない。幸か不幸かTSMCはGAAを2025年あたりに予定しており、なのでもし早期にGAAの実用化が出来れば、これを武器に逆転できる、というあたりがSamsungの描いたシナリオであろう。ぶっちゃけ、4LPEを実用化しても、どこまでユーザーがそれを求めるか不明、というあたりもあるのではないかと思う。

個人的にはGAAがそもそも2021年中に立ち上がり2022年から量産開始できるか? と言われるとちょっと疑問であるし、先もちょっと述べたが既に現在の先端プロセスはトランジスタよりも配線層の方が性能に対して支配的になりつつある。GAAにあわせてどんな配線テクニック、あるいは配線層の素材や構造を導入できるか、が3nm世代の鍵だと思うが、このあたりはまだ見えてこないところだ。恐らくは6月位までには、何かしらのアナウンスがSamsungからあると思うのだが。

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