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台湾文化の浸透力:誕生60年の老舗調理家電と最新のコーヒーメーカー | nippon.com

台湾で愛される魔法のような調理家電「大同電鍋」がSNSをきっかけに小さなブームとなっている。直近の日本での反響や、著者が考える台湾発のライフスタイル家電の魅力についてつづった。

台湾発の万能調理家電「大同電鍋(だいどうでんなべ)」

2020年末、台湾発の万能調理家電ついて、情報発信サービスの「note」に投稿した記事 無人島に持っていくべき調理家電ナンバーワン 『大同電鍋』 がSNSで大きな話題となったり、瞬く間に日本の在庫が消えるという現象が起きた。

あまりの反響に驚いたのは、大同の日本法人の皆さんかもしれない。楽天の公式販売店には3日で100件を超える注文が入り、現在も一部のカラーやサイズは入手困難となっているのだとか。

そもそも「大同電鍋」とは台湾での誕生から60年の歴史を持ち、台湾家庭には必ずあると言われている万能調理家電だ。『炊く・蒸す・煮込む・温める』の4役を1台で担い、お米が炊けるのはもちろんのこと、野菜を蒸したり、肉じゃがなどの煮込み料理を作ったり、さらには冷えたおかずを皿ごと温めることもできる。

“実家に大同電鍋があるかどうかで台湾人か分かる” と言われるほど、身近な存在。そんな昔ながらの調理家電が「ハイテクで多機能な家電にあふれた日本で人気沸騰中」と台湾人が知ったらきっと不思議に思うだろう。

私自身、コロナ禍のステイホームで台所に立つ機会も増えた今、ほぼ毎日大同電鍋を利用するヘビーユーザーである。1人でも多くの人にこの便利さを知ってほしい! と熱量たっぷりに電鍋愛をつづったnote記事がバズった直後、日本法人の游明徳社長から、お礼に」とLサイズの大同電鍋が届いた。

圧倒的な「余白」が魅力

大同電鍋を知らない方に、簡単に紹介したい。電鍋で使われている技術自体はすさまじくローテクだ。というのも、1950年代に日本で発売された「自動式電気釜」と同じ仕組みで、形も機能もほぼ当時のまま。日本の家電市場ではとっくに淘汰されてしまったが、台湾では、そのシンプルな機能と使いやすさゆえに広く愛され、2021年の今まで、長きにわたり大切にされてきた。

さまざまな操作ができるタッチパネルもなければ、タイマーやメニューもない。スイッチはたった1つだけ。普通、家電を購入すると分厚い説明書がついているものだが、そうしたものもない。まるでiPhoneが登場したときのような潔さだ。実際の使い方は、以下の3ステップ。

1.電鍋本体に水を注ぐ(水量によって加熱時間が変わる)電鍋の外鍋に水を注ぐ。細かく計量しなくてもアバウトでOK!
電鍋の外鍋に水を注ぐ。細かく計量しなくてもアバウトでOK!

2.調理したい食材を置く(付属の内鍋に入れてセットしてもいいし、適当な耐熱皿に食材を入れてセットしてもいい)

食材と調味料を入れた内鍋を電鍋にセット
食材と調味料を入れた内鍋を電鍋にセット

3.スイッチを押す

スイッチを押す。電源のオンオフと保温の切り替えボタンのみ
スイッチを押す。電源のオンオフと保温の切り替えボタンのみ

なんと以上である。この3ステップだけで、お米はほかほかに炊きあがり、冷えたおかずは加熱ムラなく温まり、チルドの焼売もジューシーに蒸しあがり、そしてカレーや肉じゃがなどの煮込み料理も作れる。加熱が終わると自動でスイッチが切れるので、消し忘れて大惨事になることもない。

外鍋に入れた水を電気でじわじわと温めて、その蒸気で食材を加熱する。つまり日本で多く売られている圧力鍋や全自動調理器などとは違うので、調理中ふたをあけて「あ〜もうちょっと加熱した方がよさそうだな」と思ったら、また外釜に水をじゃばーっと足せばいいし、もう十分かな? と思ったら、調理の途中でも手動でスイッチをオフにすればいい。

とにかく適当! その大ざっぱさが電鍋の魅力なのだ。食材の載せた皿をそのまま電鍋にセットしてできあがったら皿ごと食卓へ出せることも洗い物を増やしたくない主婦の心をくすぐる。

食材の入ったお皿をセットして、出来上がったらそのまま食卓へ
食材の入ったお皿をセットして、出来上がったらそのまま食卓へ

しかしながら、「あれもこれもやろうと思えばできる」という万能さゆえ、消費者に対する分かりやすいメッセージが必要とされる巨大な日本の家電市場では、逆になかなか広まりにくいのでは? と個人的には思っていた。

家電量販店では、さまざまなメーカーが工夫をこらして開発したハイテクな調理家電が並んでいる。AIが好みを学習する電子レンジや、蒸気の出ない炊飯器、専門機能に特化した焼き芋メーカー、サラダチキンメーカー等など。「○○ならお任せ!」と突き抜けた機能を提げるほかの調理家電に比べて、60年前からほとんど変わらない、シンプルなスイッチひとつで勝負する大同電鍋のいかに潔いことか。

しかし、この「なににも特化していない」「使う人の目的や生活スタイル次第でいかようにもアレンジできる」という圧倒的な余白が、私たち主婦の目には目新しく映った。冷蔵庫にあるものを適当に放り込んで「スイッチぽん」すれば、レシピを見ずともなんとなく一品が完成してしまう大同電鍋の方が、料理自体のハードルを下げてくれるものだ。そもそも、あれこれとハイテクな機能がついてきたところで使いこなせないことがほとんどなのだから。

電鍋日本法人に聞いた、日本での売れ行きは?

日本での販売や管理を担当している游明徳社長にお話を伺った。

現在、大同電鍋はYahooショッピングや楽天の公式販売店などを中心に販売している。家電量販店などでの取り扱いがないため、これまでは「台湾フェア」のような物産展やイベントに出店することで売上を伸ばしていた。しかしコロナ禍でイベントの中止が相次ぎ、2020年の大同電鍋の売上げは、前年比30%減だったという。

そうした中で、SNSを通じた大同電鍋のブレイクは希望の光となった。台湾ではL(10合)サイズの電鍋が主流だが、日本では台所事情などもありM(6合)サイズが多く売れているそうだ。しかし使っているうちに「大は小を兼ねる」ということを実感した利用者が、2台目としてLサイズを購入するケースも増えているのだとか。

日本法人に寄せられる質問で非常に多いのが「外鍋に入れる水の量」についてだそうだ。レシピ通りに正しく作りたい日本人ならではの傾向かもしれないが、私が伝えたいことは、「台湾人はみんな適当にやっている」ということだ。

ユーザー同士の交流が活発なことも大導電鍋の特徴だ。Twitterやinstagramでは「電鍋でこんなもの作ってみました」と利用者が投稿したり、有志のFacebookグループ「大同電鍋愛好会 in日本」(メンバーは約5000人)などを通じて、連日のように情報交換が行われたりしている。

私自身、SNSの情報を通じて、料理だけでなく、空だきで不織布マスクを消毒したり、ハーブを入れて炊き、加熱中にシュンシュンと出る蒸気を利用して加湿器代わりしたりしている人がいることを知った。

こうしてさまざまな電鍋の可能性を他のユーザーのSNS投稿から学び、「こんなこともできるの!?」と日々驚かされている。多様なレシピが掲載された説明書がないからこそ、ユーザー同士が交流の場を求めて自発的にアクションを起こしたくなるのかもしれない。

台湾発のライフスタイル家電

台湾初のIoTコーヒーメーカー「iDrip」(写真:iDrip 提供)
台湾初のIoTコーヒーメーカー「iDrip」(写真:iDrip 提供)

もちろんこうした古くからある家電だけではなく、現在は、台湾が得意とするAIやIoTなど最先端の技術をライフスタイルに適用した製品も多い。

著者が特に注目しているのは、世界のトップバリスタたちのドリップ方法をAIが学習し、注水量や温度・速度・ドリップ回数・タイミングなどのこまやかな技を機械で完全再現する台湾発のIoTコーヒーメーカー「iDrip」だ。

現在は、生活提案型家電店をうたう「二子玉川 蔦屋家電」でも取り扱いが始まっており、海外諸国でも注目されているという。

著者が同社の創業者を取材した際に印象的だったコメントがある。それが「現在のテクノロジーは、常に効率性が重視され、より生産性高く、より便利に、ということに重きが置かれている。私たちはスマートフォンを手に入れて、確かに便利になった。だけど逆に仕事が忙しくなってしまった」という言葉だ。

ただハイテクなものを生み出して世の中をあっと言わせるよりも、私たち現代人が忘れがちな豊かな日常や、身体・精神ともにヘルシーな生き方、非効率的だけど心と身体に良い方法などにあえて重きを置くのは、大同電鍋にも通ずる台湾人のマインドなのかもしれない。テクノロジーとは、ただそれだけが独り歩きするのではなく、大前提として、私たちの豊かな暮らしを支えるためのものであるのだから。

コロナ禍によって家の中で過ごすことも多くなり、「お家の中のささやかな幸せ」と向き合う機会も増えた今。ただ便利なだけじゃない台湾発の製品や、それらを発展させてきた台湾人のマインドから学ぶものは多いのではないだろうか。

バナー写真:モダンな雰囲気の白もかわいい大同電鍋

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